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遺言

遺言書と遺言執行者

「遺言書」とパソコンやスマホで検索をすれば、とても全ては読み切れないほどにたくさんのサイトを閲覧する事ができます。記載内容の文量もサイトによって様々ですが、2、3のサイトを読めば、書籍を購入したり図書館に足を運ばずとも、ある程度の知識を手にすることはできるでしょう。インターネットの力は本当にすごいなと感じます。そこで今回は、遺言についてインターネットでもあまり書かれていない内容に触れてみたいと思います。

まずは、遺言について今一度確認してみましょう。遺言によって財産を譲るお相手が、配偶者や子供などの血縁者か、法定相続人(遺言の有無に関係なく相続人になる人)でない第三者かによって、財産移転の効果、時期が異なってきます。財産を遺言者の死亡によって譲るお相手が、配偶者や子供などの法定相続人であれば、遺言者の死亡と同時に財産が移転する効力が生じます。しかし遺言者の死亡によって財産を譲るお相手が、法定相続人以外ですと、具体的な手続きを行わなければ財産移転の効力が完全に生じません。不動産なら名義変更手続き、預貯金なら銀行の相続センターとのやりとりなどが必要となります。

ここからが本題です。なぜ財産を譲る相手によって上記のような違いがでてくるのでしょうか。それは法定相続人であれば、権利者(得する人)、義務者(損する人)という対立構造が生じないため、遺言者の死亡と同時に相続による財産移転の効力が生じ、法定相続人でない第三者ですと権利者と義務者に対立構造が発生するからです。言い変えますと、遺言によって家族などの法定相続人が財産を遺言者から譲り受ける場合は他者の協力は必要ありません。しかし遺言によって財産を法定相続人でない第三者が譲り受ける場合は、法定相続人の協力が必要となるのです。

協力の具体的な内容ですが、法定相続人全員の印鑑証明書を交付してもらうことが必要となります。この時点で法的な業務経験のない方では、ほとんど不可能に近いくらい困難な作業といえるでしょう。なぜなら通常であれば法定相続人は、亡くなった遺言者から財産をもらえるはずだったのに、遺言によって第三者の手に渡ってしまうからです。それは法定相続人にとって容易には受け入れ難い事です。場合によっては調停や訴訟を検討している可能性もあります。そんな人達から印鑑証明書をもらうのは生半可なことではないでしょう。

そういった負担を大きく解消する手段として「遺言執行者の選任」が大変効果的です。遺言執行者とは、「相続による財産移転を行う人」の事です。遺言執行者が存在すれば法定相続人から印鑑証明書を取得する必要がなくなり、遺言執行者だけで手続きを進める事ができるのです。そこで遺言執行者の選任方法ですが、遺言書の記載で行うことができます。また、遺言者の死亡後であっても、家庭裁判所に選任してもらうこともできます。
(※1ヵ月ほどかかりますが、さほど難しい手続きではありません)

遺言の文言によって財産移転時期や効果が異なる

遺言のフレーズには財産を「相続させる」「遺贈する」という文言があります。意味として「財産をあげる」「贈与する」と同義です。しかし法的な効果としては「相続させる」と「遺贈する」では大きな違いがあるのです。

不動産の名義変更では遺言で財産をもらえる事になっている方に対し、「長男の○○にA土地を相続させる」と記載されていた場合は、長男が単独で名義変更の手続きを行うことができます。手続がスピーディで簡単に行えるのです。しかし一方で「長男にA地を遺贈する」と遺言に記載されていた場合は、他の相続人全員と共同で名義変更の手続きをしなければなりません。しかも印鑑証明書も法定相続人全員のものが必要となります。言い換えますと他の共同相続人全員の協力が必要となるのです。相続による名義変更の手続きは、単独で手続きが行えるのと手続きに他の相続人全員の協力が必要なのとでは、手続きの負担、必要書類、期間など天と地ほどの差があるのです。たとえば、登記原因証明情報、委任状などの書類に他の相続人に署名捺印をしてもらう必要があります。共同相続人が同じ市、または県に在住していればまだ良いのですが、遠方にお住まいの場合、郵送によるやり取りなど大きなタイムロスとなります。また相続人の中に不仲の方がいた場合は、手続きに協力を得られにくいと考えられます。その場合は遺産分割調停などで対応せざるを得なくなるケースもあり、時間も費用もかかってしまうことになります。

上記の問題点は不動産の手続きだけでなく、預貯金や株式の名義変更でも同様に当てはまります。せっかくの財産を特定の相続人に承継させたいという希望をもって遺言を残されるのなら、相続の手続きもスムーズに負担なく進めたいものです。生涯に一度の遺言ですから、最大限ご希望に沿った文書を残しましょう。

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